ストーリーを補完するというより、キャラクターや物語の制作過程の話がほとんどです。
この作品に関しては、あえて謎のままあやふやにしておきたい部分もあるのですが、我慢できずに説明しちゃっているかもしれません。あんまり喋りすぎなところは削りました……。
ネタバレがありますのでクリア後に読んでいただくことをお勧めします。長いです。
七つ柱の神の子たちは、七福神がモチーフ
そもそもこのゲームの制作は、過去に作った創作キャラたち(寿菜たち)に物語を作ってあげようと思ったことからはじまったのでした。
冬や夏美(母)、ほのかや一馬、傍仕えたちなどは、ゲームの為に新しくできたキャラなのですが、寿菜たち神の子七人が生まれたのは、なんと、〇年前。私が中学生の時でした。
その当時、私の周りでなんでもかんでも擬人化や美男美女化してキャラクターを作るのが流行っていたんです。
でも大体、そのどれもにストーリーまではなく、キャラ設定だけ作ってちょっと絵を描いて満足、ぐらいな感じでした。
七福神を選んだのも、「これならだれとも被らないだろう」という軽い気持ちでした。
まさか、大人になってからこれをもとにゲームを作るとは……。
とはいえ、中学生が作ったキャラクターですから、そのままの設定だと目も当てられない痛い感じになるんです。
ゲーム用にシナリオを作るうえでキャラ設定も大幅に変え、結局完成した「八ツ神のかみかくし」ともとの寿菜たちを比べると全く別物になってます。(ところどころ面影はありますが……)
●もともとのキャラクター●
寿菜は天真爛漫でふわふわなドジっ子で、
黒鷹はお節介なみんなのオカンで(特に寿菜に過保護)、
禄華は賢いけど高飛車なギャルで、
沙里は寡黙でクールな出来すぎくんで、
恵太は運だけでなんでも乗り越えてきたアホの陽キャで
美布は泰然自若なミステリアス女子でした。
天真だけはあんまり変わらなかったです。
なぜか関西弁で、禄華ちゃんと音楽が大好き。
天真のこの関西弁設定も、無駄なキャラ付けだし要らないな……と思ったんですが、、、今更標準語にしても「天真じゃない感」が強すぎて私が受け入れられず、なんとかストーリーに意味を組み込めないかと考えるのに苦労しました。なのでアレは完全に後付けです。
「八ツ神のかみかくし」ストーリーについて
七人の神の子のために作り始めた物語なので、とにかくキャラクターを魅せる作品にしたいと思っていました。
なので、まずはじめにキャラクターの弱点やトラウマなどのネガティブな部分を決め、それを克服するためのお話になるように組み立てていきました。
例えば、、
沙里は、御役目を真面目に務めようとするものの、優しい性格と苛烈な御役目の板挟みになってしまっている。
美布は、神として強い力を持っているけれど、本当は力を捨てて人間になりたいと願っている。
などなど……。
元々のキャラ設定では弱点らしい弱点が無いキャラがほとんどだったので、この工程でかなり今のキャラクターに近づいたと思います。黒鷹や沙里は本当に完璧超人という感じだったので……。
大きな弱点が無いのは天真だけですね。
天真は、どちらかというと傍仕え寄りのポジションというか。禄華とセットのマスコットみたいな感覚なので、弱点は作らず、物語の中の役割だけ持たせておきました。
物語の中のキャラクターの役割
天真
前述した天真の役割というのが、「器」についての詳細を語る役ですね。
七人の神の子の中で彼は唯一、子どもや神霊の継承に関する話を出しています。
エンドロールでの子どもの名づけや、8章『前日』での「器は老いない」という話、番外編『恋ごころ』での天真の母と自分の元となった器の話をするのも、天真の大事な役割でした。
物語を進めるキャラではなく、世界観を深めるためのキャラクターですね。
沙里・禄華・天真・(恵太)
この面々に共通するのは、冬に友好的な態度ではあるものの「人を攫って器にする」部分に関しては全く揺らがないことです。
彼らにとって人間を攫い代を重ねるのは当然であり、本心から冬に同情するところがあっても根本的な部分ではそこに肩入れするつもりは全くありません。
いくら交流を深めて仲良くなっても絶対に踏み入れない・変えられないものがある、というひとつのテーマを出すためのチームです。
黒鷹
深く仲良くなってしまえば自分の世界の常識すら覆して冬に尽くしてしまいかねない黒鷹は、上記の四人とは真逆の立場にいます。
潜在的な部分で六ツ神の祖先である世真の影響を受けている可能性もありますが、本来の彼の優しさや愛情深さが主となって、黒鷹は冬に入れ込みすぎてしまいます。
今まで依存していたはずの寿菜はほったらかしで冬に夢中です。
この危うさが彼の魅力のひとつでもありますが、本当に黒鷹は神様に向いてないですね。
寿菜
冬を神の子たちの問題に巻き込んでいく、八ツ神のかみかくしのストーリー展開に重要なキャラクターです。
もともとは本当に何も考えてないふわふわな食いしん坊キャラだったんですけど……。
淡々としていてドライで、他者に共感せず、自分の目的の為なら手段を選ばない、などなど、ネオ寿菜の性格や行動を考えるとき、『サイコパス』の特徴を参考に考えていきました。
「サイコパス」って単にやばい行動を取る人、みたいな意味で使われているのを散見しますが、調べてみると面白いですね。自分の解釈が正しいかは分かりませんが。
美布
神の子でありながら人間になりたいという願望を持つキャラクターです。
そのため、冬には過剰に味方するところがあります。人間風なことをするのが好きで、恋にも憧れがあります。
決められた運命をわかっている上で抗う、それでもどうしようもないことはあるけど、抗ったことは無駄ではなかった。と、切なくも前向きに物語を終えられるようなキャラにしました。
これは私の好みが強く出ているなと思います。
ハッピーエンドは好きですが、なにもかもが解決して望み通り丸く収まる終わり方よりも、「何かを失って(諦めて)、別の何かを得る」お話がもっと好きです。
美布に当てはめると、「人間になれるかもという希望や夢」を失って、「冬たち人間と過ごした大切な思い出と自分の人生や御役目についての気づき」を得た。という感じです。
物語の中で得たものが、これからの人生にとって少しでもいい影響を与えるものなのであれば、それはハッピーエンドだと思っています。
七福神と八つ神のキャラについて
なんといっても神様なので、公に「これが元ネタです!」みたいに言うのって怒られちゃうかも、、とビビり散らかした結果、作中の神にはオリジナルの名前をつけています。
神様の詳細についてはつらつら書くとキリがないので、直接モチーフにした部分以外は省きます。
一ツ神/沙名貴神(さなちのかみ)
キャラクター :沙里/父・沙綺
モチーフ :毘沙門天
武人の神様として有名で、毘沙門天の仏像はほとんどのものが武装している姿です。上杉謙信が崇拝していたことで有名ですね。
「災厄を薙ぎ払う守護神」という特徴から、門守として皆を監視し守る立場である今の一ツ神のイメージに繋がっていきます。
二ツ神/刀寿慶安神(とうじゅけいあんのかみ)
キャラクター :寿菜/父・時安/遥か過去・延寿
モチーフ :寿老人
延命長寿や身体健全などの健康面でのご利益があると言われています。
ご利益や姿などが福禄寿に似ているので寿菜たち二ツ神は健康特化にしようと思い、そこから「傷や病を受けない(心身共に)」という設定に繋げました。
「二ツ神は感情の起伏が極端に少ない」というのも、心を守るための二ツ神の能力が発揮されているためです。良いのか、悪いのか。
二ツ神の傍仕えであるオニユリは影の物の怪で、固有の力として「体を割って生んだ分身を使っていろんな場所を見て回る」ことができます。
これは、もともとは二ツ神が門守を務めていた名残です。
延寿(最後の門守を務めた二ツ神)の代では、影の物の怪がその力でお山を監視していたのでしょう。
作中では、一方的に冬を気に入っていたオニユリが、冬を探したりちょっかいを掛けに行ったりすることにしか使われてませんが……。
三ツ神/禄絆之命(ろくはんのめ)
キャラクター :禄華・禄生/母・深禄
モチーフ :福禄寿
頭が長い老人の姿をしている神様で、長寿、子孫繁栄、財運などのご利益があります。
ご利益面では他の神様とも被り倒しているので、「勉強のし過ぎで頭が大きくなった」という逸話を元に学問の神様ということで禄華のキャラ立てをしました。
四ツ神/鏡布泉大神(きょうぶいずみのおおかみ)
キャラクター :美布/父・布貴
モチーフ :布袋尊
七福神の中で唯一、実在の人間だったとされています。
布袋尊の元となったカイシという僧には、未来の出来事や天気を予知する能力があったそうです。
この辺りの話がまるまる美布の設定に生かされています。
五ツ神/天楽思神(あまのがくしのかみ)
キャラクター :天真/母・天音
モチーフ :弁財天
音楽や水の神様として広く知られ、楽器を持った天女の姿で現されることが多いです。
「とても嫉妬深いため、恋人同士でお参りすると別れさせられる」といった俗説があります。
音楽の神様、ということで天真がピアノに興味を持つ話に繋げました。
元を辿れば、母・天音が同じ音楽好きとして親密になった「天真の器となった人間」がピアノが好きだったから、天真がピアノに興味を持った、という話になります。ややこしい……。
弁財天が嫉妬深いという話も、「恋への情熱」と都合良く捉え、「天音が問答無用で恋した相手を器にした」という設定に生かしています。
六ツ神/大黒真方(おおくろさねがた)
キャラクター :黒鷹/父・大和/遥か過去・世真
モチーフ :大黒天
財運と厨房(食べ物)の神様。
本当の姿は破壊と再生を司るヒンドゥー教の神様とされています。…破壊と再生。
「いなばの白兎」という神話の中では、誰もが見捨てた狡賢いウサギを助けた心優しい神様と言われています。
正確には七福神の大黒天とウサギを助けた大国主大神は別の神なのですが、似ているためいつからか同一視されるようになったそうです。
黒鷹が趣味で料理に没頭していたのは食べ物の神様というところから。
七ツ神/田恵天(でんけいてん)
キャラクター :恵太/父・恵慈
モチーフ :恵比寿
商売繁盛や豊漁の神様です。釣り竿と鯛を抱えた姿が有名ですね。
足腰が弱く、あまり動くことができなかったため、足を使わない釣りをして生活していたそうです。
恵太は、動けるけど動かない、だけなんですけども。
「釣りが得意」⇒「強運」に置き換えて七ツ神の能力を立てました。
アヤトリは鯛ではなく鯉なんですが、これは私がアヤトリのキャラデザをする際に鯛の画像を直視できなかったためです。
魚のビジュアルが昔から本当に本当に苦手で、鯉もかなりきつかったんですが、なんとかなりました。
そうまでしてアヤトリの姿を魚に留めたのは、「誰かはモチーフ(七福神)に気づいてくれるかな」という期待も込めてのことでした。
恵比寿様は一番有名ですし、恵太=恵比寿は比較的わかりやすいかも、と。
八ツ神/稲木彦名神(いなぎひこなのかみ)
キャラクター :冬/父・友春/遥か過去・稲日
モチーフ :宇迦之御魂神(ウカノミタマ)
食物を司る神様として、五穀豊穣・商売繁盛のご利益があるとされています。
稲荷神社の御祭神です。
この掲載の仕方だと誤解を生みそうなので少し補足しますが、冬や友春は主として人間です。神域を出て神ではなくなってしまった稲日の未練というか亡霊のような、かすかな神霊がほそぼそと稲葉(友春の家系)の血筋に受け継がれているということにしています。
人間の世界で暮らしたがっていたはずの稲日が冬の中でしきりに故郷へ帰りたいと泣くのは、『私たちはどうあっても、敷之山でしか生きられない。授かった力や、器や、運命を受け入れて。……心中するしか、ない』と、悟ったからかもしれません。
名づけについて
名づけに関してはも~~~~~本当にゆるゆるで、考察してくださった方に余計な混乱を生んでしまったな……とめちゃくちゃに後悔しています。
そんなに深く考えているネーミングはほとんどありません。ノリと響きの好みです。
七人の神の子とその親の名前は七福神の名前を一字ずつ取ったもの。昔名付けたまま使っています。
佐伯冬
彼の初期設定が「神社の家の息子」だったため、全国の神社の家の名字なんかを調べたりして、その中で佐伯さんを選びました。画数少なくてシンプルでいいなって。
別に全然関係ない名字でもよかったんですけど、お惣菜屋に設定を変えてからもそのまま使いました。
「冬」という名前は、主人公としての仮の名前だったものなんですが、愛着がわいたのでこれでええやんと思いそのままに。
キャラの名前を入力するタイプのゲームで、主人公が男の子なら「冬」女の子なら「春」とつけて遊ぶ作者の癖というか習性のせいです。でも可愛いので気に入っています。ふゆ。
ハンドルネームもその流れで「晴(はる)」になりました。適当すぎる、、、。
息子が冬なので家族の名前も季節で揃えることにして、夏美と友春くんの名前もごく安直に決めました。妹か弟が生まれていたら「秋」がつく名前になっていたんでしょう。
世良兄弟
あまりに申し訳なくてX(旧Twitter)でも言っていたんですが、世良と世真(六ツ神の祖先)は無関係です。
「世が一緒だから何か意味があるかも」、、とプレイヤー様を混乱させてしまい……本当に、自分の適当さがニクい……!
由来は龍が如くの世良勝です。世良さん渋かっこええ……と思ったときのノリで名づけました。ゴッドファーザー……(ちがう)。
あと世っていう字が単に好きなんですよね。なんか、おしゃれでかわいいから。
傍仕え
カズラ(蛇)・ワカクサ(犬)・アヤトリ(鯉)・シズカ(狐)・スミゾメ(鳥)・イッシキ(猫)
シズカは、自分の創作漫画『ほどけたパズル』の主人公・近藤静から取ってきました。
名付けた当時は『ほどけたパズル』のゲームを作るつもりがなかったので、愛着のある名前を、というだけの理由でつけました。
今になって「名前被るじゃん、、」と焦ってますが、宗助(貝原)もそこから取ってきた名前を使ってるので、もう諦めました。
『ほどけたパズル』のゲームは今作ってますが、そこに登場する方の宗助は字だけ変えて聡介にしてます。
他
カズラ→蛇のイメージから葛。
ワカクサ→覚えてない。
アヤトリ→かわいいから(幼女か)。
スミゾメ→京都のお気に入りの地名から。
イッシキ→もう会うこともない昔の知り合いの名前。響きが好き。
余談
この子たちが生まれたのは中学生の時なのですが、高校生の頃にも寿菜たちが主人公のちょっとした漫画を描いてみたりしてました。
全然土着信仰とか神隠しとかの設定は無かったです。空からやってきた寿菜たちが人間に混ざって暮らすゆる~い日常漫画でした。
寿菜たち七人がそれぞれ仲良くなる人間のキャラが七人いたんですが、ゲーム作るときに「そんな大量にキャラの立ち絵描けないよ!!!」と思ったので、彼らの役割を冬くんにほぼ全部集約させ、一人七役分に。
夏美とか世良兄弟にも役割振ってますが、それでもかなり高負荷です。かわいそうに……。
七福神がモチーフだという話は黙っていようと思っていたんですが、気づいてくださる方がいらっしゃったので、吐き出してみました。
長くなりましたが、ここまでご精読いただき感謝いたします。
終。
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